トヨタグループにおける品質不正
トヨタグループであるダイハツ工業は2023年4月28日、東南アジアなど海外向けに生産、開発された4車種について、認証に必要なドアの衝突試験をパスするため、本来の仕様にはない加工を施す不正を行っていたことを発表。対象車種は約8万8000台。タイとマレーシアで生産しており、一部はOEM(相手先ブランド製造)供給によってトヨタブランドで販売されていました。内部告発で社内の不正行為が確認されました。
ダイハツによると、不正があったのは、側面から衝撃を受けた際に、ドアの破損で乗っている人が傷つかない仕様になっているかどうかを調べる試験。ドアの内張り部分に不正な加工を施し、滋賀県にある同社の滋賀テクニカルセンターで行った認証試験を通過させていました。内部通報があり、社内で聞き取り調査を実施し判明。加工がない状態で再び試験を行い、国際基準を満たしていたとのこと。
そして2023年12月、ダイハツ工業は、国の認証取得の不正問題で新たに174件の不正(衝突試験のほかに排ガスや燃費の試験なども含まれ、不正は1989年から確認されたということです)が見つかったと発表し、国内外のすべての車種で出荷の停止を決めました。
それに先立って、トヨタグループでは2023年3月、グループの源流である豊田自動織機のフォークリフト用エンジンで、排出ガスの国内認証に関する法令違反が明らかになっています。耐久試験の際、排出ガス成分の実測値を使わずに推定値を用いて結果に代えるといった不正行為を行っていました。2024年1月には、自動車用エンジン3機種(「ハイエース」「ハイラックス」「ランドクルーザー」などに搭載)にも不正が判明したと発表し、トヨタは対象となる10車種の出荷を一時停止する方針を明らかにしました。
部材のレベルでは、特殊鋼大手の愛知製鋼(トヨタ自動車グループ)が2023年5月17日、寸法公差が規定から外れた製品(公差外れ品)を顧客に納品していたと公表しました。公差外れの不正が見つかったのは、知多工場(愛知県東海市)が製造する直径が10~100mmの丸棒鋼材で、長さが6000mmの製品。クランクシャフトなどエンジン部品の材料として使用されています。日本産業規格(JIS)および顧客と取り決めた仕様(以下、顧客仕様)では公差が「-ゼロmm~+40mm」であるのに対し、「-ゼロmm~+60mm」の公差外れ品を出荷していた。1995年から公差外れ品と認識していたことが同社の社内調査で判明していたのに対し、一部製品について「是正処置を後回しにした」(同社)とのことです。同製品を材料として生産を行う顧客から、生産ラインでチョコ停(設備や生産ラインが一時的に停止するトラブル)が頻発したことから、クレームとなったことがきっかけで発覚しました。
2022年には、トヨタグループ内の商用車部門の大手である日野自動車が、エンジンの排出ガスや燃費性能に関する国の認証試験で、データを改ざんするなどの不正を行っていたことが発覚。国土交通省は立ち入り調査し、また、日野自動車の不正を調べた外部有識者による特別調査委員会の報告書は、不正の温床となった企業風土について「できないことをできないと言えない風通しの悪い組織で、パワハラが生まれやすい」と指摘し、組織のあり方に問題があると断じています。
各種の不正は様々なコスト負担を増やし、収益を減らします。
たとえば日野自動車は、不正発表後にトラックやバスの国内出荷を停止。23年3月期の連結最終赤字は1176億円と赤字幅は過去最大で最終赤字は3期連続となりました。ブランドは大幅に毀損し、その再建に向けたコストも必要になっています。その一環として現在のユーザーに対しても次回車検時の重量税の増加分を補償する旨を2023年5月30日に発表。グループの工場などの資産の切り売りも行われています。
また数々の不正を受け、親会社であるトヨタ自動車はトヨタの認証業務や、グループ全体の製品・サービスについて総点検を行うことになります。それらのコスト負担は甚大といえます。
結果、トヨタは燃料電池車がEVに対する優位性があると目された商用車市場の、虎の子の日野自動車について、単独での再建を諦め、三菱ふそうを擁するダイムラートラックと提携を行い、三菱ふそうとの統合を図ることを2023年5月30日に発表。
乗用車と商用車では車の性質や市場動向が異なるため長期的な視野での相乗効果を目指す必要があるが、その違いに苦しんだ結果が、出資比率を下げつつも規模拡大でカバーする方向に結実しました。
つまり、品質不正の結果、将来的な収益を一定程度諦めることになったのです。
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